
「青森ヒバ」はさまざまな長所を持った木です。では実際に建材として利用するとき、どんなところに使うのでしょうか。まず、「シロアリに強い木」だから、使いたいのは柱や根太の部分です。次に「耐朽力抜群で、湿気にも強く腐りにくい」から、使いたいのは土台・濡れ縁・かもい・敷居・外壁などです。そして「木目が緻密で美しい」から、使いたいのは長押・欄間・床柱・天井などです。つまり「青森ヒバ」は、家中のどこでも利用できる木です。また、和風造りだけでなく、洋風にも合う明るい色調が魅力です。

イエシロアリによる供試材の被害状態
「家屋のガン」といわれるシロアリ。建物の土台や柱、筋交いなどの材表面は食べ残して内部を食害するため、発見が難しく、気付いたときは手遅れというケースが多いのが、シロアリの被害。下の表でわかるように、ほかのほとんどの木がシロアリの被害を受けるのに対して、「青森ヒバ」はシロアリを寄せ付けません。これは「青森ヒバ」の中に含まれる「メタノール可溶成分」によるものとされています。「青森ヒバ」と「青森ヒバからメタノールを抽出した残渣物」を比較実験したところ、「青森ヒバ」は120時間でシロアリが死滅し、残渣物にはシロアリが積極的に近づき食害したことからも証明されました。
シロアリは、木造の湿気密閉建物ほど好むといわれますが、ほかのどんな木材よりもシロアリに強い「青森ヒバ」を適所に使用することで、被害を防ぐことができます。

提供木のシロアリ被害指数(平均値)

「青森ヒバ」の産地のひとつ、青森県下北半島の猿ヶ森には、約800年前に大津波により埋もれ木になった、ヒバの埋没林があります。この埋もれ木が腐朽しているのは表面の2センチほどで、中は今でも製材として使えるものがほとんどです。
このように「青森ヒバ」は驚くほど腐りにくく耐朽性がありますが、これは揮発性物質のヒノキチオールと、シャメールBという成分が含まれているためです。この成分は木材腐朽菌に対して強い殺菌力を持ち、腐朽菌の成長を止める力も持っています。
しかもヒバ材は、比較的硬く、圧縮力に対しても抵抗力が大きいことから、古くから重要建築用材として用いられてきたのです。平泉の中尊寺金色堂は、約890年前にヒバ造りで建てられ、今なおその姿を残しています。

建築用木材の腐朽菌
「ワダグサレタケ」に対する耐朽度
温暖で多湿な日本の気候条件は、木材腐朽菌にとって好環境です。また最近は省エネが叫ばれ、密閉式住宅を志向しているため、木材腐朽菌にとってますます好条件になっています。
ところが先に述べたように、「青森ヒバ」には強力な殺菌力を持つヒノキチオールとシャメールBという成分がありますから、湿気の強いところでも腐りません。下の腐朽菌に対する耐朽度表からも「ヒバ」がいかに腐りにくい木であるかがわかります。
建物の濡れ縁、軒回り、ベランダ、風呂・風呂場、雨がよく当たる場所や水回り部分でも、「青森ヒバ」は威力を発揮します。

ヒバ材の木目が緻密で美しいのは、200年、300年という長い月日をかけて、ゆっくり成長した木だからです。
何代にもわたり守り育てられ、長い風雪に耐えた「青森ヒバ」は、強度が高く、独特の明るい色つやが特長。そのため内装や建具などにも利用されているのです。